有限会社郡山共立会計

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判例と解説

更正を予知してされた修正申告書の提出

修正申告書の提出は「更正があるべきことを予知してされたもの」か否かが争われた事例

裁決取消等請求事件 
名古屋地裁平成12年(行ウ)第5号 平成12年7月12日判決

*主たる争点*

本件は、平成8年7月13日相続開始に係る原告の相続税について、被告税務署長が行った過少申告加算税賦課決定処分の取消しが求められた事件である。主たる争点は、右処分の前提たる原告の修正申告書の提出が、国税通則法(以下「法」という。)65条5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたもの」か否かにあった。

*判決の要旨*

本判決は、要旨次のとおり判示して、原告の請求を棄却した。

1 法65条5項の「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」とは、税務職員が申告に係る国税についての調査に着手し、その申告が不適正であることを発見するかその端緒となる資料を発見し、これによりその後調査が進行して先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し、更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識したうえで修正申告を決意して修正申告書を提出したものでないことをいうと解すべきである。

2 本件においては、調査担当職員は本件調査の結果、本件申告漏れ財産の存在を発見し、原告に対して本件調査の経過を説明し、本件申告漏れ財産につき具体的に指摘するとともに、修正申告書の提出をしょうようしているのであるから、原告が右しょうように応じないときには、更正処分がなされたであろうことは客観的にみて明らかである。そして、原告は、右のとおり修正申告をしょうようされた後、右しょうように沿う内容の本件修正申告書を提出しているのであるから、本件修正申告をしなければ更正処分を受けるであろうということを認識していたと認められ、そうすると、本件修正申告について法65条5項は適用されないから、本件賦課決定処分は適法になされているというべきである。

*コメント*

本件において、原告は、『法65条5項における「更正」とは、客観的事実関係と合致した絶対的に正当な更正処分のみを指すものであって、取り消される余地のある誤った更正処分を含まず、また、同項の「予知してされたもの」とは、納税者が課税庁のなす更正処分を正しいと信頼し、これに承服する意思でした修正申告のみを指すのであって、納税者が課税庁の見解と異なる事実を立証するための物的証拠を提出することが困難であるとか、公益のために納税しようという考え方を有していたなどの理由から、あえて正当であるとは認識していない修正申告を自発的に行った場合には、右修正申告は、更正があるべきこと予知してされたものとはいえない』旨主張したのであるが、本判決は、『法は文言上これらについて何らの制限を加えておらず、また、仮に原告主張のように解釈すると、調査の有無及び客観的な更正の可能性に関する納税者の知、不知の状況に関わりなく、納税者が課税庁の見解を正当だと考えていたかどうかという主観的な内心の事情のみによって同項の適用の可否が左右されることとなり、このような解釈は加算税制度の設けられた趣旨を没却するもの』として、これを退けている。